『疑い』
「うつ病です」
淡白な声で、まるで「花粉症です」とでも言われたんじゃないかと錯覚するような冷たい言葉。
「息子さんには説明しましたから」
……………
沈黙。
それ以上何も説明してくれない。
次の患者と間違われているんじゃないかと思ってしまう。
だって、息子が出た後に私が入った時、
「○○さん?」
「…? いいえ、ちがいますけど」
……
次の患者さんのカルテが机の上に重ねてあって、どうやら私は間違えられたみたい。
けれど、私をもう一度見て、
「息子さんは、うつ病です」
……
何だかもう訳がわからない。
間違えられていないよね?
もしかして、私に再度、念を押したように聞こえたのは間違い?
ねじ込まれた感を感じたのは気のせい?
というか、説明それだけですか?
ーこれから(母じゃなく)息子さんと話をしていきます。
え?まだ中学生だよ?親にも同じように説明が欲しいでしょ。
…なんて、思っていたら頭の中は渦を巻くように混乱していく。
何を聞いていいのかわからず、次の患者を診たい雰囲気を感じて、診察室を体が震えるような感覚で退室した。
そんなことだったから、『疑い』という文字がその日から頭の中を張り付いて離れない。
その日からネットの中の情報を闇雲に探す。
でも、なかなかポンポンと見つかるものではなく、こんな情報が溢れた世の中になっても自分の欲しい情報って見つからないんだな、と思った。
起立性調節障害についてネットで調べた時も同じ。
性別、年齢、症状、など同じ条件で知りたいと思うけどなかなかない。
今回のうつ病でも同じだった。
だから、私みたいな人がきっといるはず。
誰かのためになるかもしれない。
そう思って、開いたブログ。
ブログを書くことで、自分の不安を明日への踏み台にできるように、誰かの不安を和らげることができるように、これからも書き記していきたいと思う。